レビュー

日本古来の性行動はおおらかだった!

日本の性風俗の歴史が詳細に記された書

作者の永井義男先生はご自身のフィールドワークに基づき、日本の性の歴史を浮き彫りにしています。もともと性欲に対する罪悪感や禁欲主義を特徴とするキリスト教的性規範が浸透していた西洋と比較して、日本は古来から性的なことに関しては概ね寛容な国でした。奈良時代に記された日本最古の和歌集である万葉集にも性的表現はもとより、性行為が商業化していたことを示唆する記述もあり、古来の日本人は性について隠すことなく、成熟した性生活を送っていたことがうかがい知れます。

江戸時代は日本の性が花開いた時代だった

このようなおおらかな性を享受してきた日本人ですが、殊に江戸時代はこれまでの日本の性的文化が花開いた時代であったそうです。江戸時代では玄人と素人が峻別されており、現在のように素人が性産業に従事することはなく、むしろ女性の場合、素人の方が制約もないため野放図な性生活を楽しんでいたようです。男性についても性への欲望が現代人よりはるかに大きく、近年指摘されている「夫婦のセックスレス」や「草食系の傾向」など全く無縁であったと言及されています。

夜這いの文化とは?

この本は日本古来からの伝統的慣習である「夜這い」に関しても詳細に書かれています。かいつまんでいうと、戦国時代から徳川時代には農村部で広く夜這いが行われており、厳しい肉体労働の中、男女ともに性の解放があって当然だと考えられていました。夜這いの様式は村によって様々であり、村内の男女なら結婚とは関係がなく解放されている自由型、未婚の男性と女性に限って許される若衆型、祭りや盆に限って解放される限定型などがあったようです。

明治時代は逆行することに

明治時代となり富国強兵策として国民道徳向上を目的に一夫一婦制の確立、純潔思想の普及を強行、夜這い弾圧の法的基盤が整えられました。さらに性表現についても明治政府が「風紀」を問題にして性表現を規制したことから性のタブーは始まったようである。すなわち、明治以前の日本には性表現のタブーは存在せず、性行動にもほぼタブーとされることはなくおおらかだったにかかわらず、近代の始まりである明治政府によって「性的なもの≒猥褻」として刑法が成立、規制が始まりました。

戦後の日本は

その後、性規範は第二次世界大戦後に大きく変化したと言われています。つまり戦前の性生活の目的は家の存続を守るための生殖の意味が大きく、妻の不倫を処罰する姦通罪も存在しました。しかし戦後の日本国憲法によって男女同権が制定され姦通罪は廃止、男女の双方の自由意志が婚姻の条件になり、徐々に性に対する規範が薄れてき、それと同時に日本人の性生活は再び活性化することとなります。

この本は読み応えあります

ザーッと日本の性の歴史について要約しましたが、江戸時代が最も華やかだったと思われます。その江戸の性をリアルに描写したのがこの本です。この本を読んで、江戸っ子になったつもりで、その頃の時代の性生活を体感していただければと思います。