カウンセリング

女性の性嫌悪に対するセックスセラピー

性嫌悪の定義は本邦でははっきりしたものがありませんが、性的雰囲気になるのを嫌ったり、性的接触を極端に嫌悪し回避する現象のことです。精神科の診断基準、DSM-5  精神障害の診断と統計マニュアル 第5版では女性の性的関心と興奮の障害(Female sexual interest/ Arousal disorder)に分類されます。また最近では男性の性嫌悪も問題になることがあるようですが、やはり女性の性機能障害としての性嫌悪症が圧倒的に多い印象です。

女性の性嫌悪の原因ですが、様々なものがあると思います。これについては東邦大学の調査結果で、「性嫌悪」に伴う自覚症状として8割が性欲低下、7割が興奮障害、1割がオーガズム障害を伴っていたようです。以下に我々が簡易的に用いている女性の性嫌悪のセルフチェックを示します。質問の1は必須事項でそれ以外に1つでも当てはまるものがあれば、性嫌悪の傾向がありますのでカウンセリングをおすすめします。

性嫌悪セルフチェック

1.パートナーとセックスする気が起きない、行為に不安や恐怖感を感じる。

2.セックス中に興奮せず何か冷めた感じになる。

3.セックスしてもオーガズムに達しない。

4.膣内性交はできるが挿入されると痛みがある。

5.マスターベーションをすることに嫌悪感がある。

私が経験した割と重症な例では、性に対する過去のトラウマがある方がいらっしゃいます。例えば性行為を強要されたり、痴漢被害にあったようなケースです。初めての性的な経験が上記のようなものであれば、決して性行為を素晴らしいものと認識できません。むしろ、性自体を恐怖、痛みのような概念でしか捉えられなくなります。それに加えてワギニスムスといって膣の周囲の筋肉が痙攣して膣が不随意収縮を起こし挿入困難になっていることもあります。

しかし、多くの女性ではこのようなトラウマ体験は認められず、多くの方が男性パートナーとの関係性に問題があったようです。例えば、多くの方が「セックスに持ち込む際、ムードや技術がなく、いきなり胸や性器を触ってくる」ことに強い不満があるなど、男性の性に対する教育不足から生じているようです。

同様に約6割の方で何らかの性交痛があるため、これがきっかけになり性に対して、具体的には異性とのスキンシップに対して自信を喪失し、積極的になれずにいる女性も多いです。性交痛から性嫌悪の流れは言わば必然であると思いますが、性交痛の原因が子宮内膜症や子宮線筋症などの器質的疾患(体の問題)によるものは少数であり、大多数が心理的な問題であることがわかっています。

つまり、パートナーとの性的コミニケーションがうまくとれておらず、性感が十分でないまま挿入されてしまうことにより、性交痛を生じていること考えれます。

そうなると、女性の場合、我慢して受け身のセックスを継続してしまうリスクとなり、最終的には異性とのコミュニケーションに支障が出てきてしまいます。具体的には、異性と付き合うことができなくなったり、実際に付き合っても性行為がなく別れてしまったり、もし結婚できてもセックスレスの状態になり不妊カップルになってしまいます。

以上のように性嫌悪になる女性には様々な背景があります。一般的に女性が性交を受け入れる条件として、相手に対する性欲(ときめき・発情)と相手に対する共感(尊敬・親しみ)の少なくとも一つが必要と考えられています。一方で女性は男性に比べて、我慢して性行為に応じてしまう状況に陥りやすく、その原因として「挙児希望」「離婚した際の経済的不安」「孤独への恐怖」があると推察されます。

われわれは、このような性嫌悪によって異性に対して積極的になれない女性や、セックスレスになっているカップルに対して以下のようなアプローチで状況の改善を図ります。男性パートナーが現在いない方に対しても有効なカウンセリングになります。以下、我々のメソッドについて簡単に説明します。

女性の性嫌悪に対する解決方法

カップルカウンセリング

先ほど紹介したアンケート調査でも男性パートナーの女性に対する扱い、態度が問題となることも多々あります。まずお互いの感情を理解し合っていただき、男性性教育も兼ねてしっかりカウンセリングします。さらに、男性パートナーに対しては、女性視点の性交を意識して頂くために、いわば性教育を兼ねた指導を行っています。

行動療法

まずはタッチセラピーとして体周囲から性器に向かって触られる感覚に慣れていきます。しかしこの段階では性器にはタッチしません。次にクリトリス刺激により同部位の快感やオルガズムを確認します。最終的には指を膣口付近に挿入するところまで行います。セルフプレジャー・アイテムを使用して徐々に感覚を拡張します。これらが達成できたら、ご自身の男性パートナーと一緒に行動療法に移行します(bridge techinque)。

心理カウンセリング 

必要があれば上記の行動療法と同時進行で心理カウンセリングを行います。具体的には、交流分析の手法を取り入れた過去のトラウマ体験を乗り越える方法や恐怖症、嫌悪感の克服のための心理カウンセリングを行います。

性嫌悪症の女性にとってその呪縛からの解放は一筋縄ではいきません。それでも、現状を改善させたい、パートナーから関係を修正したい、不妊を解決したいなどの理由で解決したいと思っている人もたくさんいらっしゃると思います。

性に対して研究を重ねるにつれて、性に嫌悪感があるけれども現実との葛藤で悩まれている女性が多くいることを実感してきました。この閉塞的な状況を打開する助けになりたいという思いから性嫌悪かもしれないと思っている女性たちのカウンセリングを行なっています。

現在パートナーがいない方でも大丈夫です。少し時間はかかりますが、性に対する否定的な考えは徐々に改善されるはずです。相談やカウンセリング希望の方は相談・予約フォームでお問い合わせください。あなたのお悩みに寄り添えることができれば幸いです。