ブックレビュー

ドーパミン中毒

スタンフォード大学の精神科医、アンナ・レンブケ先生執筆の「ドーパミン中毒」という本を読んだ。

最近の世の中は、明らかに過剰な情報に溢れている。そのせいで、現代人はいつも何かに追われているようだ。実際我々は時間があると、脳内でドーパミンを分泌させるような行為を欲求してしまう。なぜかといえば、現代資本主義による原理から考えると人々をドーパミン中毒にさせることは、マーケットのシャアを広げるためにも理に適った行為であるからだ。私たちは、ドーパミン中毒にさせられることで、貴重な時間を奪われているし、周囲との関係性も希薄にさせられているのである。さらには蔓延する鬱などに対処する薬剤として、脳内ドーパミンを増加させるオピオイド系の麻薬物質がアメリカでは医師の処方箋として安易に処方されており、一時期社会問題化したことも記憶に新しい。

その結果、動画、ネットショッピング、アルコール、ドラック、セックスなどにへの依存症で問題になった人たちを治療する医師が気がついたこと、それは、この過剰な消費社会に対する一つの処方箋だろう。本書には、実際の症例や対処法が筆者の実体験も踏まえて詳細に語られている。

我々のカウンセリングルームにも性的なことに関することで夫婦・カップル関係が立ち行かなくなり相談に来る人が後を絶たない。その病理の一環として、いわゆる「ドーパミン中毒」によるものと思われる依存症が根底にあるケースもちらほらではあるが経験する。

そのような方に対するセックスセラピーにおいて、我々がクライエントを良い方向に導くために、本書が示唆に富むことは言うまでもない。