論文紹介

コロナウイルスが性生活に与えた影響は?

背景

コロナウイルス(COVID-19)が世界に与えた影響は計り知れないものがあります。今回はコロナウイルスが人間の性生活(Sexual Life)にどのような影響を与えたかをイタリアの論文を参考にして考察していきたいと思います。

出典は以下の論文になります。フリーの論文ですので、詳しく読みたい方は以下のリンクをご参照ください。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32888982/

そもそもイタリアも含め全世界ではコロナウイルスの蔓延に伴い、いわゆる「ステイホーム」で自宅にいる時間が長くなっています。著者らのイタリアでは12万人が感染し、1万6千人が死亡しているわけですが、このような戦時下のような非常事態において、全てのことが変わってしまいました。仕事も当然の如くオフィスワークはリモートワークに切り替わっていきました。これは日本でも同じような状況であると思います。

特にカップルにとっては、一日中一緒にいる時間が以前よりずっと長くなっています。さらに、子供たちも学校がe-ラーニングになることで、家で共有する時間と同じ空間にいる機会が増えています。このような状況の中、コロナウイルスに対する恐れは確実で、将来的な精神的負担感が鬱や適応障害となって現れることも考えられます。

このような人々の気分の変化は、カップルの性的興味に影響を及ぼすことが想像できます。以前の研究によると、不安障害は性的な機能不全を引き起こすことが報告されています。また経済的な悪影響も性的欲求の減少につながることがわかっています。今回の研究ではコロナウイルスによる自粛期間の間、個人やカップルの性がどのように変化しているのか詳細に調査しており、一見する価値があると思います。

研究方法と結果

1576名のイタリア人、うち女性が1018名、男性が558名によるアンケート調査です。ほとんどの被験者は31歳から46歳、64.7%が大学卒、96.8%が安定的な関係を築いているカップルです。

まず下の図を見てください。これはパンデミック前後の幸福度比較になりますが、well-being scoreという幸福度を測るスコアの分布です。幸福度は1がno well-beingで10がtotal well-beingですので、数字が上がれば幸福度が上がっているという解釈です。

黄色がパンデミック前、グレーがパンデミック後なので、明らかにパンデミック後に幸福度が下がっており、統計的にも有意な低下です。

さらに性生活に関して調べた結果、前提としてパンデミック前後、どちらにおいても幸福度と性交回数の性の相関関係が判明しました。つまり幸福度が高いと行為の頻度が上がるということです。またコロナウイルスの影響で給料が下がっても性交の頻度に変化はありませんでした。

しかし、やはりですがパンデミック前後で性交回数は有意に減少していました。具体的には週2回以上性交するカップルはパンデミック前は54.2%でしたがパンデミック後は37.2%に減少しています。さらに性行為が0になった人も11.0%から35.8%に増えいてます。これは元々性交回数の多いイタリア人であるので、これで止まっているかもしれず、日本人ではさらに悪化している可能性もあります。

次に男女別に見たものが下の表になります。

赤枠で囲んだ部分になりますが、性欲減退に関しては女性より男性の方が顕著であることがわかります。具体的には79%の男性が性的欲求が減ったと答えていますが、女性は33%に留まっています。また自慰行為の変化は男女ともに認められていません。

日本の調査では?

こちらはアダルトグッズで有名な株式会社TENGAが20 代~50代の男女、計960名を対象に行った「コロナと性」についての調査結果になります。この結果によると、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、日本人でも性行為の回数が減少していることが判明しました。特にボリュームゾーンの月1−9回の群は減少傾向です。

そして性欲に関しては、特に日本人女性で顕著な減少が認めらます。一方で日本人男性はあまり影響を受けていないようです。これはイタリアの研究とは逆の結果となっていました。

まとめ

全世界で未だ猛威を奮っているコロナウイルスですが、少なからず男女のセックスライフにも影響を与えていることは確実なようです。カップルがともに過ごす時間が増えているのにも関わらず、性交回数が減っている理由としては精神的な負担感、幸福度の減少のほかに、プライバシーがない事なども影響しているようです。

このような変化が一時的なものなのか、ニューノーマルになっていくのか今後注意深くフォローしていきたいと思います。また日本においては今後も独特の変化があるかもしれません。何より早く通常の性生活が実現することが望まれます。皆さん、コロナ感染症に負けないように性の健康も保っていきましょう。